未来を変えよう、科学の力で

丸の内金融が考える不老不死へのサイエンス

テロメア長の回復実験 Cell Stem Cell 2020/6/4より

テロメアは私たちの細胞の寿命と言われています。

複製のたびに末端が削れていき、やがて細胞分裂ができなくなります。

テロメラーゼ(テロメアを維持・再構築する酵素)の秘密を解き明かし、生命の延長と維持に役立てることは、2009年にノーベル賞を受賞したテロメラーゼの発見以来、科学の目標とされてきました。

しかし、これまで治療法として実証されることはありませんでした。

 

テロメア疾患は、テロメアの長さを維持できなくなるため、細胞の老化が早まる原因となります。その結果、再生不良性貧血、肝硬変、肺線維症などの疾患が発生します。

これらの疾患に取り組むことができれば、テロメアを標的とした一般的な老化延長治療にも期待が持てます。

 

ダナファーバー/ボストン小児がん・血液疾患センターの研究者による新しい研究は、いわゆるテロメア疾患への取り組みにおいて画期的な進歩をもたらす可能性が示唆されました。

 

 

この研究では、先天性角化不全症(DC)の患者から提供された細胞が使用されました。これは、テロメアの長さに異常が生じ、骨髄が十分な血球を生産できなくなる遺伝的変異によって引き起こされる骨髄不全の稀な遺伝変異です。

DCは複数の臓器に悪影響を与えてしまいます。

現在の治療法は骨髄移植ですが、これはリスクが高く、血液系の回復にしか効果がありません。

DCの原因となる遺伝子変異は、TERTとTERCと呼ばれる2つの分子を破壊することにより、テロメラーゼの形成や機能を破壊します。

TERTは幹細胞で作られる酵素で、TERCはいわゆるノンコーディングRNAで、テロメアの繰り返しDNA配列を作るための鋳型となるもので、TERTとTERCが結合してテロメラーゼを形成します。

その過程で重要な遺伝子の一つが、TERCの処理と安定化の鍵を握るPARNです。PARN が突然変異した場合、TERCとテロメラーゼは少なくなり、テロメアが早期短縮します。

そして、これらの不安定化は PAPD5という酵素が原因となっています。

そこで研究チームはPAPD5に着目し、この酵素の働きを抑えることで、テロメアの早期短縮を防ごうと考えました。

 

マウスを使った実験で、DC状態のマウスを人為的に作り、PAPD5阻害剤を経口投与したところ、狙い通り、TERCレベルの上昇、テロメア長の回復が観察されました。

 

今回はDCという特殊な疾患でのケースですが、こうした研究結果が積み重なることで、

健康な人のテロメアも回復させる技術につながり、細胞を若がえらせることにつながるのではないかと考えます。

 

参考URL: 

https://www.longevity.technology/telomeres-its-not-the-end-of-the-line/

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1934590920301387?via%3Dihub