バイオテック 資金調達ニュース コロナウイルス関連
目次
今回は、新型コロナウイルス対策の緊急資金拠出制度を使った、バイオテックスタートアップの資金調達事例をご紹介します。
現在、アメリカ国立衛生研究所(NIH)によるRapid Acceleration of Diagnostics(RADx)が実施されています。これは新型コロナウイルスの検査に関する提案を中心に広くアイデアを募って出資するプロジェクトで、アメリカ政府は15億ドル(日本円で1,600億円以上)の予算をNIHに配分しています。
そして最近、NIHによる資金拠出企業が発表されていましたので、その中で注目の起業をいくつか紹介していきます。
① Helix https://www.helix.com/
調達額 $33.4M
ゲノム解析を得意とするスタートアップ。世界最大級のCLIA/CAP次世代シークエンシングラボ(米国の治験基準を満たした次世代シークエンシング)を保有する。Helixの検査システムでは、非侵襲的なキットによって取得したサンプルをサンディエゴにあるHelixのラボで処理し、翌日には診断結果を出すことができる。Helixは今回の調達額を用いて、秋までに1日10万人の診断能力獲得を目指す予定。
② マンモスバイオサイエンス https://mammoth.bio/
調達額 不明
ゲノム編集技術「CRISPR(クリスパー)」を開発したバイオベンチャー。この技術を応用して、新型コロナウイルス診断キットを開発中。GSK社との提携によってOTC検査薬として一般向けに販売を予定。現在の試験データでは、PCR検査と同等以上の精度で、20分以内に検査結果が分かるとのこと。
③ Mesa Biotech
調達額 $15.4M
Accula検査システムという小型の検査装置でPCR検査を行える。患者の粘液サンプルからウイルスの有無を判定し、30分で結果が分かる。FDA(米国食品医薬品局)はこのキットに対して、緊急使用許可権限を使用しており、すでに医療機関での利用が始まっている。
個人的にはマンモスバイオサイエンスの検査キットがとても興味深いと感じました。体温計で体温を計るような感覚で、コロナウイルスの有無を判定できるようになれば、感染拡大へ終止符を打てる未来も近いと感じます。
新型コロナウイルスは明らかにネガティブな出来事です。こうした感染拡大は本来ならば起きては欲しくない出来事でした。しかしその一方で、バイオベンチャーにとってはプラスの側面も表れているのも事実です。コロナ対策の製品開発に対して、資金が流入し技術向上の機会となっています。きっとこうした開発競争の中で生み出された技術が、コロナウイルス終息後もバイオセクターを牽引していく原動力となるはずです。そういった観点からも引き続き、NIHによる資金拠出の動向はウォッチしていきたいと思っています。