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丸の内金融が考える不老不死へのサイエンス

ポンプ機能を持った人工心臓の開発に成功

世界では年間で1700万人以上の方が心臓病で亡くなっています。

これを防ぐためには、心臓の移植手術が必要ですが、ドナーの方の数も足りておらず、深刻な問題となっています。

そんな中。バイオ3Dプリンターを用いた人工心臓の開発が進展しています!

 

ミネソタ大学の研究チームがバイオ3Dプリンターを用いて、ヒトの細胞由来の心臓ポンプを作成することに成功しました。この研究チームでは、長年人工心臓の開発に取り組んでいました。今までのアプローチは幹細胞を心筋細胞に分化させてから、心臓に組み込むという方法でしたが、これでは上手くポンプ機能を再現するのに失敗してきました。そこで新たなアプローチとして、幹細胞を人工心臓に組み込んだ後に、それを心筋細胞に分化させるという方法をとりました。

その結果、今回は初めてポンプの機能を有した心筋細胞の集合体を形成できまたとのことです。

イントロ

心臓の幾何学的に複雑な構造を再現したモデルでは、軟質の生体材料を用いて、心臓のチャンバーや大血管を収容することができ、3Dバイオプリンティングを用いて再現することが可能である。しかし、ポンプ機能をサポートするために連続した生きた筋肉を組み込むことは、まだ達成されていなかった。これは主に、非増殖性の細胞タイプであることで有名な心筋細胞を高密度で収容しなければならないという課題に起因している。一方で、別の方法としては、高密度に増殖して組織空間を埋めることができるヒト誘導多能性幹細胞を用いて印刷し、その後、その場で心筋細胞に分化させることが考えられていた。

 

本研究では、ヒト多能性幹細胞の増殖と心筋細胞への分化を促進するバイオインクを開発し、連続する心筋で構成された電気機械的に機能するチャンバー型オルガノイドを 3 次元的にプリントする。

 

方法と結果

このバイオインクを用いて、2 つのチャンバーと血管の入口と出口を備えたヒト人工多能性幹細胞を搭載した構造体を 3 次元的に印刷した。ヒト多能性幹細胞を十分な密度まで増殖させた後、構造体内で細胞を分化させ、得られたヒトチャンバー型筋ポンプの機能を実証した。ヒトチャンバー型筋ポンプは、マクロスケールの拍動と、薬物やペーシングへの応答性を伴う連続的な活動電位の伝播を実証した。接続されたチャンバーは、灌流を可能にし、心臓の機能や健康や疾患に伴うリモデリングの研究に不可欠な圧力/容積関係の再現を可能にした。

 

結論

この進歩は、心筋のポンプ機能に不可欠な幾何学的構造を有するという重要な利点を持ちながら、集合体ベースのオルガノイドに似たマクロスケールの組織の生成に向けた重要な一歩を踏み出したものである。将来的には、このタイプのヒトチャンバー型オルガノイドは、心臓医療機器の治験としての役割を果たし、最終的には治療用組織移植につながる可能性がある。

 

参考文献

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCRESAHA.119.316155

 

 

感想

現在はまだ約1.5cmの小さな構造体ということですが、今後サイズを大きくしていき、人間のサイズの心臓を作ることができる日もそう遠くはないでしょう。

文献でも述べらている通り、この人工心臓開発技術は、心臓移植の手段として有用であることはもちろんのこと、薬の効き目を測定するための治験用としての利用可能性もあることでしょう。

バイオ3Dプリンターの技術を使った研究は、医療を大きく変えるブレイクスルーになる可能性があるので、引き続き注目分野です!

 

バイオ3Dプリンターに関する以前の記事はこちら